行政書士みうら国際法務事務所

<最良の解決策をご一緒に考えましょう>

成年後見(法定後見) / 銀行預貯金口座の凍結解除 / 休眠預金

<成年後見制度利用者数>

2022年12月末日現在の成年後見制度利用者数は以下の通りです。

 

総数    224,442人

成年後見      171,858人(76.5%)

保佐              38,949人(17.3%)

補助              10,983人(4.8%)

任意後見          2,652人(1.1%)

 

成年後見の必要とされる500万人、そして成年後見予備軍とされる500万人、合計1,000万人から見ると、約2.2%に当たり、とても少ないと言えます。

<成年後見開始原因別割合>

成年後見開始原因の種別は以下の通りです。

1、認知症       64.1%

2、知的障害      9.9%

3、統合失調症   9.0%

4、脳機能障害   4.8%

5、意識障害      0.9%

6、その他       11.2%

<成年後見申立て動機>

1、預貯金等の管理・解約   37.1%

2、身上監護                    23.7%

3、介護保険契約               12.0%

4、不動産の処分               10.4%

5、相続手続                      8.0%

6、保険金受取                   4.2%

7、訴訟手続                      2.1%

8、その他                         2.5%

<銀行預貯金口座の凍結 / 銀行預貯金口座の凍結解除>

2006年、平成18年は預金凍結元年と呼ばれます。

銀行が、認知症の方の預貯金を凍結し始めたのです。

一度凍結された銀行預貯金口座を解除するのは簡単ではありません。

認知症を原因とする「銀行預貯金口座の凍結解除」は成年後見人を立てる以外には方法がありません。

相続の発生を原因とする「銀行預貯金口座の凍結解除」は法律上正しい「遺言」または、「遺産分割協議書」の成立を待たねばなりません。

 

それ以前は、例えば年老いた両親の預金通帳と銀行印を預かって払い戻しを申請した場合でも、引出しが出来たのです。

但し、銀行によっては一律ではありませんが「委任状」の提出を求められた場合もあったと思われます。

 

夫婦間の場合はもっと簡略で、例えば夫名義の預金通帳でも、妻が生活費

を引き出す時、通帳と印鑑を持参すれば可能でした。

 

ところが、2006年以降は、払い戻しが急に厳格に審査されるようになったのです。

 

さらに、2012年、平成24年以降は、「本人の意思であることがハッキリと確認出来ない場合」は一切の払い戻しを拒否する事態になりました。

 

この2012年、平成24年は成年後見制度のターニングポイントと呼ばれ、

国(最高裁判所)による制度運用の考え方が大きく動いた年でもあったのです。

 

この流れの中、銀行の払い戻しにおいて、「キャッシュカード」の有無が大変重要な意味を持つことがハッキリしました。

つまり、銀行のキャッシュカードさえ作っておけば、かなり対応が可能と

なるのです。

 

但し、預金通帳の磁気の消滅やキャッシュカードの磁気の消滅が何年位で

起こるかを警戒する必要があります。

 

 また、認知症にすでになってしまっている方は、キャッシュカードが作れ

ないという現実があります。

 

銀行の「貸金庫」を利用している方も多いと思います。

これも注意する必要があります。

最低限「貸金庫を開けられる代理人」をあらかじめ指名して

おく必要があります。 そうしないと自分に万一の状態が発生

した時、開けられなくなってしまうのです。

 

これから貸金庫を利用したいと思う方は、自分が認知症になった場合どうなるのか、納得出来るまで質問し、疑問があるなら利用は控えた方が無難です。

 

<休眠口座・休眠預金>

ある一定の期間、預金の出し入れのない口座を休眠口座、その預金を休眠預金と呼んでいます。ゆうちょ銀行は5年、銀行は10年とされています。

この口座の数は極めて多く、1年間に実に1,300万口座あるとされています。少額のものが多いとされていますが、多額のものも含まれています。

その合計金額は、1年間に1,000億円以上に上るとの報告があります。

 

この休眠預金は、会計処理上、「雑益」となります。つまり、銀行の「利益」になってしまうのです。1口座が数百円程度の預金はいいとしても、1口座、数千万円の預金が銀行の利益になってしまうのは理解できないものです。

 

どうして、残高が極めて多額の預金口座が休眠預金になってしまうのでしょうか。

答えは預金者本人の死亡です。

つまり、相続人が預金のあることに気がつかなければ、休眠預金となってしまうのです。

 

皆さんは、金融機関は親切で、相続人を探して、連絡をしてくれるものと

思ってはいませんか。全く違うのです。決して相続人を探して、連絡などしてはくれません。

亡くなった方の口座が、払い戻しをされないで、5年、または、10年経過した時、その預金は確実に金融機関のものになってしまうのです。 

<複数の後見人の例>

被後見人のために行う任務は「財産管理」「身上監護」です。しかし、この任務には共通性がありません。ですから、この2つの仕事に対して、それぞれ別の後見人を付ける可能性があり、実際行われています。それを決めるのは家庭裁判所です。

 

例えば、財産管理は弁護士に、そして、身上監護は家族後見人に任せるという場合があります。

 

さらに、家族間で対立があり、もめた中で申し立てをした場合の例として、家庭裁判所は「財産管理」は弁護士に任せ、「身上監護」は社会福祉士に任せる、と決定することがあり得ます。

一般家庭では理解出来ないことかも知れません。

<後見制度支援信託の開始>

2012年、平成24年から「後見制度支援信託」が開始されました。

この制度は、日常使うお金だけを家族後見人の手元に置き、大きなお金は

民間の信託銀行が受託者となる支援信託に預け入れ、そこから出金するときには、家庭裁判所に上申書を書いて許可を求めるというものです。

 

後見制度支援信託を使うかどうかは強制とはされていません。

しかし、断ると、今度は家族後見人とは別に「後見監督人」が家庭裁判所によって付される、ということが多くなっています。

<家族・親族後見人と専門職後見人の選任の変化>

成年後見制度が発足した2000年、平成12年当時、この制度は間違いなく、後見人として「家族・親族」を当てにしていました。

この年の家族・親族後見人は実に89.9%も占めていました。

専門職後見人は8.4%、その他は1.7%でした。

 

しかし、2020年現在、成年後見制度を管轄する最高裁判所は、「家族・親族後見人は減らす」という作られた流れに沿って選任をしています。

表向きの理由は「家族後見人の不正が横行しているから」とあります。

 

その境界(潮流の変化)は2012年、平成24年です。この年の親族後見人と専門職後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士)の比率は丁度半数ずつでした。この年以後は専門職後見人が急激に増えていったのです。

*弁護士・司法書士・社会福祉士は、特に「3士業」と呼ばれています。

 

2020年1月から12月までの1年間での家族・親族後見人の選任は21.8%でした。即ち、家族・親族が後見人に選任されるのは、5人の申立ての内、わずか1人という状況なのです。

<家族が成年後見人になれない主な理由>

1、流動資産の額や種類が多い

2、親族間に意見の対立がある

3、後見人候補者が、本人の財産の運用(投資)を目的として申し立てて

いる場合

 

上記の3例が代表的なものです。

特に1、の流動資産は重大なものとして扱われます。

流動資産とは、すぐにお金に変えられるものです。

 

現在、東京では500万円を超えた場合、

首都圏では1,000万円を超えた場合は、ほとんど家族後見人は指名されないとされます。

また、仮に指名されたなら、ほぼ確実に「成年後見監督人」が重ねて指名される可能性があります。

成年後見制度は裁判所の管轄ですから、その決定に逆らうことは出来ません。

<成年後見人は誰がなっているか>

2020年1月から12月までの1年間において、全国での成年後見申立て総数は37,235件です。

その中で成年後見人に選任された内訳は以下の通りです。

1、家族・親族・・・・・・・・・・・・・・・21.8%

2、司法書士・・・・・・・・・・・・・・・・29.5%

3、弁護士・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21.7%

4、社会福祉士・・・・・・・・・・・・・・・ 14.3%

5、市民後見人・・・・・・・・・・・・・・・・0.8%

6、その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・11.9%

<成年後見市長申立て、及び市民後見人の養成>

成年後見市区町村長申立てという制度があります。

これは、身寄りもなく、生活に困窮した認知症の高齢者に対して、自治体の長が成年後見を家庭裁判所に申立てるものです。

2020年1月から12月までの1年間の申立て総数における割合は23.9%にも

及び、親族が出来ない分をかなり補完している状況にあります。

 

しかし、誰に対してでも、市区町村長が申立てをしてくれる訳ではありませんので注意する必要はあります。

 

また、国は各自治体に対して「市民後見人」の養成を委託しています。

それは、今後高齢者の急増に対して、後見人となれる人が不足すると心配されることによります。

 

特に一人暮らしの方や、親族のいない方、孤立した方など、高齢者でかつ、生計も苦しい方が認知症を発症した場合、それを支える適切な人が見つからないケースが数多く起こり得ます。

 

この状況を打開するため、成年後見人となるべく、専門の知識を習得した

「市民後見人」を多数養成する必要が高まっているのです。

 

しかし、現状では、「すでに多数養成出来た」とする自治体からの報告は

聞こえてこないようです。それは、市民後見人に支払う費用の準備など、

すぐには解決出来ないこともあるようです。

尚、2020年1月から12月における市民後見人選任の総数は296人で、全体の0.8%に当たります。

<成年後見の利用を検討すべき例>

1、親の心配より、財産に関心の強い親族がいる

2、親の財産を勝手に使っている人がいる

3、子たちの仲が悪く、常に対立している

4、同居している人が使い込みの疑いを持たれている

5、親の近くに子が誰も住んでいない

6、認知症の親に振り回されている

7、介護で疲れ果てた

8、身寄りがいない

9、親が悪質商法や詐欺にあった

<成年後見は親族が望ましい、との最高裁の考え>

2019年3月19日の朝日新聞朝刊のトップニュースで以下の内容が報道されました。

前日開かれた、成年後見制度利用促進のための国の専門家会議において、最高裁判所が「後見人には身近な親族を選任することが望ましい」との考えを示したとありました。

 

これまで、家族を排除し専門職後見人を増やして来た最高裁家庭局の成年後見運用の方針転換は大きな前進と言えます。

 

しかし、ここへ来ての方針転換は不人気を反省したというのではなく、何が何でも成年後見制度を普及させなければならないという国からの至上命令があってのことでしょう。家族を急に信用した訳ではありません。

むしろ逆で、家族に後見人をやらせて、不正しないよう監視を強めればいい、との考えによるのでしょう。

 

親族後見人は確かに増えて行くかもしれません。しかし、新後見人には、「後見支援信託」の利用が強く促され、断れば「後見監督人」が付けられる。士業後見人が今度は後見監督人として後見人となった家族を指導して行く、という図式に代わる可能性があります。

<後見/保佐/補助/の区分>

1、「後見」とは何でしょうか

 後見とは、本人の判断能力が全くない場合になされるものです。

家庭裁判所の後見開始の審判と同時に、本人(被後見人)を援助する後見人が選任されます。

 後見人は、日常生活に関する行為を除くすべての法律行為を、本人に代わってしたり(代理権)、取消したりできます(取消権)。

2、「保佐」とは何でしょうか

 保佐とは、本人の判断能力が著しく不十分な場合になされるものです。 保佐開始の審判と同時に、本人(被保佐人)を援助する保佐人が選任されます。

 被保佐人は一定の重要な行為(金銭の貸借・不動産及び自動車等の売買・自宅の増改築等)を単独ではできず、保佐人の同意が必要です。 又、同意を得ずにした行為は本人及び保佐人によって取消す事ができます。

 被保佐人は、本人の同意に基づいて、保佐人に代理権を付与できます。 その為にはその内容を確定し、別途「代理権付与の申立て」をする必要があります。 

3、「補助」とは何でしょうか

 補助とは本人の判断能力が不十分な場合になされます。

補助開始の審判と同時に本人(被補助人)を援助する補助人が選任されます。 

 補助開始の審判を申立てる場合は、本人の同意を持って、その申立てと同時に、同意権や代理権の範囲を定める申立てをしなければいけません。 これを「同意権付与の申立て」「代理権付与の申立て」と言います。

 

以上、本人の能力の程度によって区分されます。

この区分は、医師の診断書に基づいて、家庭裁判所が決めます。

実際のところ、「保佐」と「補助」の区分けは医師でも難しいとされています。

<成年後見申立て>

成年後見(法定後見)を申立てるには、まず書類一式を取得します。

最寄りの家庭裁判所にありますから、出掛けて行ってもらうのが良いでしょう。被後見人の住所によって、担当する家庭裁判所が決まっていますので、電話を掛けて確認してから行って下さい。

 

受け取った書類の中に「手引き」「記入用紙」及び「記入例」が入っています。

 

提出すべき書類は以下の通りです。

1、申立書

2、後見人等候補者身上書

3、親族関係図

4、本人の財産目録

5、本人の収支予定表

6、主治医の診断書

7、本人の戸籍謄本

8、本人及び後見人等候補者の住民票

9、本人について成年後見登記がされていない証明書

10、財産関係資料

イ、不動産

  全部事項証明書及び固定資産税評価証明書

ロ、預貯金と株式

  預貯金通帳のコピー  株式の残高報告書

ハ、生命保険、損害保険

  保険証書のコピー

ニ、負債

  金銭消費貸借契約書、返済明細書のコピー

ホ、収入

  確定申告書、給与明細書、年金額決定通知書

ヘ、支出

  納税通知書、介護保険料の決定通知書、家賃、水道光熱費、

  医療費、施設費、その他支出一切の領収書

主治医の診断書は、「鑑定」とは異なり、家庭裁判所の指定用紙に記入

 してもらうもので、数千円程度かかります。

 

<申立て書類の受理>

提出書類に不備があると修正の指摘があります。不備がないと受理されます。但し、当日は短時間で内容を見ての仮の受理ですので、その後厳格に

内容を検討されますから、日をおいて修正や追加での書類提出を求められることもあります。

 

後日家庭裁判所から、申立人及び後見人等候補者に対して、面接の連絡が

入ります。指定された日時に裁判所に出向き面接を受けます。

面接の結果により、誰が後見人にふさわしいのかを裁判所が判断します。

また、「鑑定」の必要があると判断された場合は、別途本人が医師による

鑑定を受けて、「鑑定書」を追加提出します。

尚、実際に鑑定を実施したのは、6.1%に当たります。

又、医師による鑑定費用は93.2%が10万円以下であったと報告されています。

 

<後見開始の審判>

 現在はかなり早く法定後見の審判が出るようになって来ました。

2020年においては、1ヶ月以内が39.1%で、1ヶ月以上2ヶ月以内は31.0%が該当したとあります。

但し、中には半年を超えた事例もあり、注意が必要です。

 

審判の結果は、本人、申立人、成年後見人へ郵送で通知されます。

 仮に親族が後見人候補者として自分の名を書いても拒否されることがあります。

また、仮に親族が「後見人」となった場合でも、「後見監督人」として、弁護士・司法書士がさらに選任されることもあります。

 

成年後見人が決まると家庭裁判所は職権で東京法務局において、成年後見人になった登記と、本人は被後見人の登記がされます。

 

<誰に書類作成を依頼するか>

申立て書類の作成は弁護士にしか出来ないのではないかと思われる方もいます。確かに弁護士・司法書士はすべての書類作成と提出代行が出来ます。

 

依頼のポイントは「高いか、安いか」ではありません。

「最速で、確実に出来るか」です。

 国の指示によって、「料金は自由に設定して良い」とされています。  従がって、当然ですが、この書類の作成・提出の費用は、依頼した相手 (特に士業の違い)によって全く違う 金額になる場合があります。

*注意→ 料金が高いから立派な内容の法定後見の資料に仕上がっている、ということはありません。

 

行政書士は、申立人に対して、申立人が行う書類作成の支援、及び申立人が書類を提出する際に同行することが可能です。

 

 <成年後見人となった後の仕事>

成年後見人は本人の身上監護と財産管理についての職務(後見事務)を行います。 この職務に関しては、家庭裁判所、又は後見監督人に対して、1年間に1回、報告書を提出します。

 

<銀行預貯金口座の凍結解除>

被後見人の生活を安定させるために「銀行預貯金口座の凍結解除」は重要です。

本人の預貯金を本人のために使えるように戻すのは当然のことです。

<選挙権の回復>

平成25年7月の参院選から、成年被後見人に対して、選挙権が回復しています。後見人は協力して、被後見人の権利を守る事が求められています。

下の矢印をクリックすると、動画が始まり、音声が出ます。

[イメージ映像(成年後見・相続・遺言・遺贈(寄付)・死後事務委任・施主代行)]