行政書士みうら国際法務事務所

<最良の解決策をご一緒に考えましょう>

民泊届出 / 住宅宿泊管理業者登録 / 簡易宿所営業許可

<民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行>

平成30年6月15日より、住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が施行されました。

近年、日本を訪れる外国人の急増により、ホテル・旅館が極めて不足した状態となりました。

これに対応するため、国は従来の旅館業法による、合法的な「民泊」を進めようとして来ました。しかし、何らの許可申請もしない「違法民泊」「ヤミ民泊」が横行し、国際社会の基準とはかけ離れた、粗悪な宿泊施設の体をなしていました。(違法民泊は83%以上と指摘されています)

 

そこで国は、「許可制」ではなく、「届出制」として、従来よりも制限を緩めて、合法的な、質の高い「民泊」を日本全国に広めるよう、方向転換をしたのです。

国は民泊新法の施行を機会に「ヤミ民泊」の一掃を図ろうとしています。

 

但し、この届出制による民泊には、営業日数を1年間において180日以内とする制限があります。

さらに各自治体は条例により、独自の制限を加えることも可能とされています。ですから今後民泊の事業を始めたいと思っている方(民泊ホスト)

は、各自治体の条例に注意する必要があります。

<旅館業の種別>

旅館業には、ホテル営業・旅館営業・簡易宿所営業・及び下宿営業の4種があります。

(1)ホテル営業

洋式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業です。

(2)旅館営業

和式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業です。いわゆる駅前旅館・温泉旅館・観光旅館・割烹旅館が含まれます。民宿も該当することがあります。

(3)簡易宿所営業

宿泊する場所を多人数で共用する構造及び設備を設けてする営業です。ベッドハウス・山小屋・スキー小屋・ユースホステル・カプセルホテル・ゲストハウス・外国人向け簡易旅館等が該当します。

平成30年3月15日までは、「民泊」はすべてこの簡易宿所営業として許可を取得する必要がありました。

平成30年3月15日以降は、「民泊新法」に基づく「届出」による方法

も選択可能となりました。

また、種々の厳しい条件をクリアして、1年間を通じて営業可能な、簡易宿所営業としても従来通り選択できます。

(4)下宿営業

1ヶ月以上の期間を単位として宿泊させる営業です。

この許可を取得して下宿営業を行っている方は極めて少数です。

1ヶ月以上の条件ならば、不動産賃貸借契約による方法によって対応することが可能であり、下宿営業の許可を取得することなく出来るのです。

いわゆる、マンスリーマンションによる方法です。

下宿営業と不動産賃貸借契約における、唯一の違いは、室内清掃を宿泊者

がせず、管理者が行うのが下宿営業であり、不動産賃貸借契約では、賃借人が自ら室内清掃を行います。

しかし、1日単位・1週間単位による方法(ウィークリーマンション)の

場合は、不動産賃貸借契約は不可能で、旅館業法の許可による方法で営業することになります。

<民泊新法のメリットとデメリット>

メリット1、許可制ではなく、届出制になったこと。         このことによって、民泊ホストになろうとする方の負担が幾分軽減される

ことになります。

 

メリット2、「住居専用地域」での営業が可能。

旅館業許可の場合、何の制限もなく営業できるのは、「第二種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・商業地域・準工業地域」に限られています。民泊新法の主旨は、あくまで「住宅」としての営業のため、「住居専用地域」での営業が可能になります。

 

メリット3、フロントの設置やトイレの増設が不要

旅館業許可の場合は、フロントの設置や、最低2ヶ所以上のトイレの設置が必要です。しかし、民泊新法では、こうした義務はありません。

 

メリット4、スタッフの24時間常駐義務なし。

民泊新法では「家主不在型」が認められました。代行業者に管理業務を委託(または、ホスト自身が管理者登録)すれば、スタッフを24時間常駐させる必要がありません。

なお、家主が同地に居住している場合は、「家主居住型」として、家主自身が管理業務を実行することになります。但し、家主が同地に居住することを条件として管理出来るのは宿泊室が5室までです。6室目以上は管理業務を委託するか、又は自身が管理者登録をして管理します。但し、以下に詳しく述べますが、個人が管理者登録をするには、取得していなければならない資格や該当する業務への就業経歴が必要です。

 

デメリット1、営業可能日数が年間180日以下である

民泊新法における最大のデメリットが営業日数の制限です。但し、種々の工夫を実行することによって、改善出来る可能性があります。

又、自治体の条例により、営業日数をさらに厳しくすることも可能とされています。該当地の条例には、注意する必要があります。

 

デメリット2、宿泊室の1人当たりの床面積は3.3㎡以上必要

例えば、6畳の部屋では3人が最大の収容人数となります。2段ベッドを

入れて2倍の収容人数にすることなどは出来ません。

 

デメリット3、住民とのトラブル防止措置が必要

合法民泊であることを示す標識を掲示しなければいけません。

騒音防止やゴミの処理方法などを宿泊者へ説明します。

デメリット4、安全・衛生面の確保

宿泊者名簿の備え付けをします。

定期的な清掃が必要です。

外国語で、施設の利用方法を説明します。

<住宅宿泊事業者・住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者>

民泊新法では、営業者(民泊ホスト)のことを「住宅宿泊事業者」と呼び、都道府県知事への「届出」が必要になります。

 

又、民泊運営代行業者「住宅宿泊管理業者」と呼び、都道府県知事経由で、国土交通大臣への登録が必要です。登録免許税は9万円で収入証紙(

収入印紙ではありません)を申請署に貼り付けて納めます。5年毎の更新となります。

申請は法人・個人共に可能です。

 

個人で申請出来るのは、次のいずれかに該当する方のみです。

(1)住宅の取引又は管理に関する2年以上の実務経験が記載された職経

   歴書

(2)宅地建物取引士証の写し

(3)管理業務主任者証の写し

(4)賃貸不動産経営管理士証の写し

 

民泊仲介サイト運営業者「住宅宿泊仲介業者」と呼び、都道府県知事を経由して、観光庁長官への登録が必要です。登録免許税は9万円で収入証紙を申請書に貼り付けて納めます。5年毎の更新となります。

 

上記3者の「届出」「登録」の受付は2018年3月15日から開始されます。

*施行開始前に届出をしても実際に営業が出来るのは平成30年6月15

日からとなります。

 

<民泊新法(住宅宿泊事業法)違反への罰則>

<民泊ホスト(住宅宿泊事業者)>

虚偽の届出をした場合

6ヶ月以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金

 

<民泊運営代行業者(住宅宿泊管理業者)及び、民泊仲介サイト運営業者(住宅宿泊仲介業者)>

未登録で運営、不正手段により登録、名義貸しなどをした場合

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

*大変厳しい罰則です。コンプライアンスを遵守し、適正な方法により対応して行く必要があります。

<届出できる住宅の種類>

届出ができる住宅について、民泊新法では次のように規定されています。

(1)現に人の生活の本拠として使用されている家屋

(2)入居者の募集が行われている家屋

(3)随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

 

民泊新法のガイドラインにおいて、該当する家屋の例として次のものを挙げています。

(1)休日のみ生活しているセカンドハウス

(2)転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度

   居住の用に供するために所有している空家

(3)相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に

   居住の用に供することを予定している空家

(4)生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家

*注意すべきは、「居住履歴のない新築投資用マンションは該当しない」

 とガイドラインにおいて明確に拒否されている点です。

<安全措置の適用>

(1)非常用照明器具

非常照明として認められるものには、一般社団法人日本照明工業会(JL

MA)が規定に適合していることを自主的に評定して、「JIL適合マーク」というものをつけています。

自分で勝手に判断して、バッテリー式のライトを部屋に付けたところで、非常用照明にはなりません。

 

非常用照明とは「建築基準法施行令」に次のように定められています。

*直接照明で火事が起こっても1ルクス以上(蛍光灯やLEDの場合は2

 ルクス以上)の照度を保てるもの

*火災時でも明るさを保てるように国が定めた基準をクリアしたもの

*バッテリーなどを搭載していて火災時でもきちんと明かりがつくもの

*上記以外でも国の認定を受けたもの

 

一戸建て・共同住宅に共通ですが、「家主同居で、宿泊室の床面積が50㎡以下」の場合に限り、設置は不要です。

従って、上記以外は設置する必要があります。

 

(2)消防設備

以下に該当する場合は消防設備の対処をしなくてはいけません。

*宿泊室の床面積の合計が50㎡を超える

*家主が不在の施設である

*複数の宿泊室に、同時に複数のグループを宿泊させる

 

次のいずれかの方法により対応が必要です。

A、防火の区画

  宿泊室と宿泊室の間の壁を、一定の条件によって、「準耐火構造」の

  壁によって区画します。

B、自動火災報知設備等の設置

C、スプリンクラー設備等の設置

<届出に注意すること>

*分譲マンションの所有者の場合

 管理規約に、民泊を禁止する旨の定めがないこと

 平成30年3月15日、分譲マンション管理組合全体の内民泊を容認し

 ているのは、わずか0.3%となっています。

*賃貸物件に賃借人としている場合

 賃貸人の許可が必要です

<民泊仲介サイト>

民泊ホストを始めるには「民泊仲介サイト」を利用する必要があります。

平成30年3月時点での大手民泊仲介サイトを紹介します。

(1)エアビーアンドビー(Airbnb)

   民泊仲介サイトの世界最大手です。リクルートグループと提携して

   おり、空き物件を民泊と賃貸住宅の2通りで活用できるようオーナ

   ーに提案しています。

   又、全日空と提携しており、特設サイトでエアビーアンドビー社の

   物件を紹介しています。

(2)バケーションステイ

   楽天ライフルステイが運営します。ホテル予約サイトの「ブッキン

   グ・ドットコム」と提携し、バケーションステイに掲載する民泊情

   報を提供します。

   又、レオパレス21と提携し、レオパレスが持つ民泊物件を改装

   し、楽天ライフルステイが運用代行します。

(3)ステイジャパン

   百戦錬磨が運営します。

   JTBの訪日客向けのサイトでステイジャパンの民泊を紹介します。

   又、住友林業と提携し、空き家などを改修して、魅力的な民泊物件

   を提供します。

<簡易宿所営業許可>

民泊届出ではなく、1年間を通して営業するためには、簡易宿所営業許可」を取得する必要があります。

平成30年6月15日より、取得のための制限が幾分容易になりました。

 

1、客室数

ホテル営業における最低客室は10室以上であり、旅館営業においては5室以上です。しかし、簡易宿所営業においては規制はなく、1室のみでも

可能です。

2、玄関帳場

「玄関帳場」の設置義務がなくなりました。

「玄関帳場」とは、宿泊しようとする者との面接に適する設備で、建物の管理、及び安全を守るために、従前までは義務付けられていました。

従って、宿泊室の鍵の受け渡し方法が、簡易宿所でなくても可能となります。

埼玉県は、玄関帳場の設置義務は当然にありません。但し、国内における15の道県は、「通知」により、条例で基準化(設置の義務化)しています。

3、客室の床面積の制限

基本的には33㎡以上とされています。但し、宿泊者が10人未満の簡易宿所においては、1人当たり、3.3㎡以上あれば良いとなりました。

しかし、簡易宿所の定義は、「宿泊する場所を多人数で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」とあります。従って1人のみで3.3㎡のみあれば良いのではありません。

常識的に最低限の部屋の形でなければいけません。

4、入浴設備

当該施設に近接して、公衆浴場がある等、入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、適当な規模の入浴設備が必要です。

5、許可申請に必要な書類、及び消防署の検査は義務付けられています。

6、「簡易宿所営業」は、都市計画上、旅館が建築出来ない用途地域においては申請することが出来ません。しかし、「民泊届出」は「住居専用地域」においても可能であり、両者には大きな差があります。

7、住民とのトラブル防止措置は不要

民泊においては、合法民泊であることを示す「標識」の掲示及び、騒音防止やゴミの処理方法などを宿泊者へ説明することを義務付けられていますが、「簡易宿所営業」においては不要です。

8、「簡易宿所営業」の許可申請は従前より、容易にはなりましたが、「届出」ではなく、「許可」となります。

これまで旅館営業や簡易宿所営業などを経験したこともない方が、「1~2ヶ月程度で簡単に許可される」と思い込むのはとても危険です。十分な「保健所」との事前相談と地域住民との調整、用途地域の確認、建物構造の調査、建物設備や部屋の改築の検討、消防法上の適格性の検討、その他多くの事項について、慎重に進めることが求められます。