行政書士みうら国際法務事務所

<最良の解決策をご一緒に考えましょう>

無戸籍/300日問題/嫡出推定/無住民票/無国籍/二重国籍/国籍の選択

<無戸籍>

現時点において、日本国内には数千人に及ぶ無戸籍者が存在するとされています。なぜ無戸籍者が発生してしまうのでしょうか。

日本では、生れた人は必ず出生届を出して戸籍を作ることになっています。しかし、なんらかの事情によって、親が戸籍を作らなかった場合に無戸籍者が発生します。

無戸籍者が保護された場合、自治体の首長の判断で戸籍を作ることも可能となっています。そのため、両親も身元も不明の捨て子であっても、通常は無戸籍にはなりません。

 

法務省は平成26年10月、無戸籍者に関する初の調査結果を発表しました。それによると、無戸籍の人は平成26年10月10日現在、全国に少なくても、279人いるというものです。

ただ、報告したのは全体の約1割の187市町村にすぎず、今後さらに増える見通しです。

 

<無戸籍者になる理由>

1、最も多い理由とされているのは「300日問題」と言われています。これは民法772条に記されており、「離婚後300日以内に出生した子どもは、遺伝的関係に関わらず、前夫の子と推定され、前夫の子として籍に入れなければならない」との規定によります。

新たな夫、真実の父親の子と認められるには、前夫の協力が必要となります。しかし、協力が得られず、出生届の提出を出来ずにいるのです。又、役所に届出ても「書類不備」として受付てもらえず、提出をあきらめてしまうのです。

2、親が無戸籍者であり、出生届に親の本籍が記載できず、「書類不備」となり、受付できない。

3、親が戸籍の制度を理解していなくて、届出をしない。

4、親の信条や宗教観による場合。

5、親の事情により、「出生証明書」がない場合。

イ、自宅出産したためにない。

ロ、医療費踏み倒し等で病院から逃げたため。

ハ、外国で代理出産してもらい、そこで発行された「出生証明書」を、日本で受付拒否された。

ニ、「出生証明書」は戸籍を作成するための条件ではないが、役所の担当者が誤って「書類不備」として「受付拒否」し、親が、この状態のまま放置してしまった。

ホ、戸籍の作成は無料です。しかし、お金がないと戸籍は作れないと、全く誤った認識を持った方がいます。

 

前夫の戸籍にいれない方法は次のとおりです。離婚後300日以内に出生した子は、そのまま「出生届」を出すと必ず前夫の戸籍に入ってしまいます。これでは前夫も母も共に不都合です。まず「出生届」は出さずにおきます。続いて、前夫または母から「嫡出否認」の調停を申し立てます。母は離婚後は1人の単独の戸籍を作ります。調停で審判が下され、前夫の子でないと確定したら、出生届を出します。これで母の戸籍に子が入籍します。不倫等で真の父親がいて、再婚をできる状態にある母は、その再婚届を出生届の前に出しても、後に出してもかまいません。ただし、いずれの場合にも真の父親に認知してもらう必要はあります。「親子関係不存在調停」とは、元々「嫡出子」とは推定されない子をめぐっての親子関係が存在しないことを争うものです。わかりやすく言えば、婚姻していない男女間における子をめぐる争いが代表的な例です。

 

平成27年12月16日、最高裁大法廷において、「女性の再婚禁止期間」の民法における規定「180日」に対し、「100日を超える分は違憲」と判断しました。

現民法では、「離婚後300日までに出産した子は、前夫の子と、また、再婚後、200日以降に出産した子は現夫の子と嫡出推定する」と規定されています。このため、80日の期間を、合理的ではなく、違憲と判断したのです。

この判断により、国は自治体に対し、「100日経過後の婚姻届けの受理を認める」通知を全国の自治体に出しました。

 

<無戸籍者ができない唯一のこと>

無戸籍の方が絶対に出来ないことは、参政権の行使のみです。即ち選挙権及び被選挙権の行使です。これは公職選挙法及び地方自治法に規定がありできません。これ以外は可能です。広く誤解されてしまっているのです。

<無戸籍の解消>

1、「出生届」は生後14日間の届出期間を過ぎても役所は受理しなければならない、との規定があり、父母または出生届を出すべき者が「出生届」を出すことにより、無戸籍を解消出来ます。

 

戸籍法第46条 届出期間が経過した後の届出であっても、市町村長はこれを受理しなければならない。

 

2、就籍(しゅうせき)  無戸籍者本人は、家庭裁判所の許可を得て、就籍することにより、全く新たに戸籍を得て、無戸籍を解消することが出来る。これは、父母の戸籍に入るのではなく、1人のみの新規の戸籍を得ることです。

これは「就籍許可申立事件」といいます。

 

戸籍法第110条 本籍を有しない者は、家庭裁判所の許可を得て、許可の日から10日以内に就籍の届出をしなければならない。

 

<二重戸籍>

身元不明者が発見された場合、次のような例もあります。

戸籍が作成されていると推定されるにも関わらず、特殊な事情により本来の戸籍が不明である人物に対しては、家庭裁判所が二重戸籍となる可能性を容認した上で就籍を許可する場合があります。

<無住民票と行政サービス>

「戸籍」は国が所管しますが、「住民票」は自治体の裁量で作ることができます。「無戸籍者」「無住民票者」となってしまう例は多くあるようです。しかし、国は国民を保護する義務があります。また、自治体は住民を保護する義務があるのです。ですから住民票がないから、行政サービスは受けられないとするのは明らかな誤りです。一部の役所の職員には誤った認識を持った方がいます。保育所にも行けます。学校にも入れます。住民であることと、住民票が無いことは、本来直接の関係はないのです。仮に戸籍がないとしても、現実にそこに居住しているのならば、住民票は作れるのです。自治体は作る義務があります。あきらめずにぜひ自治体に行って相談して下さい。必ず住民票は作れます。

 

<健康保険/運転免許証/銀行口座>

健康保険の取得に「住民票」の添付は必要とされていません。企業に所属する方は会社の健康保険に加入できます。自営の場合は国民健康保険に加入できます。自治体の職員が誤解している場合が大半です。

仮に受付する担当者が「住民票を添付しなければ国民健康保険に加入できない」と指摘する場合は、逆に「それならば、住民票を作成して下さい」と対応すればよいのです。

 

運転免許証の取得には「住民票」又はそれに準ずる証明の添付が必要です。これは自動車の運転という市民全体の安全を確保するためにはやむを得ないことでしょう。

但し、他の資格試験の場合には「住民票」の添付が義務付けられることは多くなく、その場合は当然に受験できます。

 

銀行口座は民間です。銀行は口座の不正取得や不正送金に対して厳格に対応しているようです。この場合も「住民票」やそれに準ずる証明が求められるようです。

 

以上のとおりです。住民票が必要ならば、先に作ることです。戸籍がないことは、住民票を作れない理由にはなり得ません。住民票は必ず作成できます。

 

<無戸籍・無住民票との思い込み>

「自分は、無戸籍・無住民票であると思い込んでいる人達」が多数います。その大半は、「故郷を10代で離れた時、親と疎遠のために、戸籍や住民票を目にしたことがなかった」というものです。戸籍や住民票を取得する方法がわからないために、「直接、故郷の役場に電話をしたら、ないと回答された」や、「何の資料も持たずに、故郷の役場に入ったら不明であると言われた」などです。


外国人、また、一部の日本人の中には、戸籍や住民票を不正に作ろうとする人達が存在するのです。これを防ぐために、市町村の窓口担当者は 慎重に対応して来るのです。


無戸籍・無住民票を解決する手がかりは学校にあります。卒業した、小・中・高等学校には、卒業生の資料が必ず残っています。個人情報に関することですので、電話のみでは回答してはくれません。直接なんらかの自己を証明できるものを手に持って訪問します。行けない場合は、郵便でやり取りします。自分を証明できる資料を同封して、問い合わせをして下さい。

この方法によって、保護者であった人の氏名・住所・連絡先、そして、当時の自分の氏名・住所・戸籍・住民票の発見につながる可能性が出て来ます。

 

「戸籍や住民票がない」と思い込んでいる人の多くは、真剣に故郷の調査をしていないことが多いのです。理由は、「親に冷たくされて、会いたくない」「友人とうまく行かなかったので交流しない」などです。

<無国籍>

「無戸籍」の人は「無国籍」ではありません。出生の時、父母のどちらか一方が日本人なら、その子は日本国籍を持ちます。また、日本で生まれ、父母がともに不明のとき、又は無国籍のときも日本国籍を持ちます。

 

日本人として明確に証明できるものは戸籍とパスポートです。しかし、戸籍もパスポートも所持していなくとも、日本国籍を持っています。

 

<二重国籍と国籍の選択>

日本は血統主義です。父母のいずれかが日本人なら、その子は日本人です。米国は生地主義です。米国内で生まれた子はアメリカ人です。仮に日本人の夫婦が米国で子を産むと、その子は日本とアメリカの2つの国籍を同時に持つことになります。いわゆる二重国籍です。

  

外国で生まれた子が、出生によって日本国籍と同時に外国の国籍も取得した時は、出生の日から3ヶ月以内に日本国籍を留保する意思表示(国籍留保の届出)をしなければ、その子は出生の時に遡って日本国籍を失うとされています。

 

なお、日本国籍の留保をしなかったことにより日本国籍を失った人については、20歳未満であって、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによって、日本国籍を再取得することができます。

 

二重国籍者は、22歳に達するまでにいずれかの国籍を選択しなければなりません。この期限内に国籍の選択をしないでいると、法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によっては日本国籍を失うことがあります。

 

国籍を選択する必要があるのは、主に2つの理由によります。まず、それぞれの国において別人として登録されるため、各国において別人と婚姻するなど、身分関係に混乱が生じるおそれがあること。そして、それぞれの国の外交保護権が衝突することにより、国際的摩擦が生じるおそれがあることによります。

 

2つの国から同時に徴兵されてしまうこともあり得ます。二重国籍の状態にある方は、いずれかの国籍を早急に選択する必要があります。