行政書士みうら国際法務事務所

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赤ちゃんポスト/国際養子縁組

熊本県熊本市の慈恵病院に「赤ちゃんポスト」が初めて設置されたのは2007年のことでした。その目的は胎児の中絶を少しでも減らし、また、新生児が捨てられたり、殺害されるのを未然に防止するためです。この7年間で100名近くの命が救われたとされています。よく誤解されてしまうようですが、決して「捨て子」を助長しているものではありません。

 

ただ、親は匿名で育てられない子を合法的に養子に出せるというシステムになっています。「遺児」ですので、市長が名前を付け、新たに1人の戸籍を作ります。熊本市内の乳児院に預けられることになります。心身ともに健康な新生児・乳児であれば、「里親」に引き取られたり、「特別養子」として迎えられる可能性もあります。

 

これに対して、障害がある子、又、将来障害が発生する可能性のある子は、日本国内ではなかなか引取り手がいないのが現実です。一方アメリカなど、先進国の富裕層ファミリーの中には、「傷害を持つ子」に対し、深い理解を示す方も数多くいると言われています。アメリカ・カナダ・オーストラリア等には、「国際養子縁組」を扱うボランティア団体があります。現実に多くの子ども達が、海外に養子として出て行ったのは事実です。

 

養子を引き渡す時に「謝礼金」は当然にあります。国際養子の場合、謝礼金の額は100万円から200万円が多いとされています。こどもが欲しい方にとってみれば決して高い金額ではありません。こどもが育てられない親にとっても、こどもの将来を他人に託すことに掛けたいという切実な親心があります。お金が介在することと「人身売買」は決して同一ではありません。

 

また、一方では悪質なブローカーが存在するのは確かです。平成26年にタイ国内において、代理母を集め、16人以上ともいわれる子どもを出産させたとされる日本人の若い男性が摘発されています。「人身売買」の疑いも持たれていますが、詳細は判明していません。

人の一生は、すぐ身近にいる人でさえ、その人のすべてを見ることは不可能です。ですから、国際養子となった方の一生を追跡することは誰にもできないのです。裕福な家庭に引き取られ、十分な教育を受けさせてもらえた国際養子も多数報告されています。また、幸せな環境にはなかったという別の報告もあります。


この「国際養子縁組」に対して規制を掛けようとする国会議員の活動が報告されています。規制の理由は「一度海外に出てしまうと、その後どうなったのか追跡ができない」というものです。また悪質な「人身売買」の対象にさせてしまう危険性もあると主張しています。一方、従前どおり「国際養子縁組」を推進したいという民間団体もあります。理由は「子ども達が生き延びて行く権利を奪ってはいけない」とするものです。

 

日本国内で「養子」といいますと、未成年は少なく、「成年養子」が2/3を占めているのです。極めて「成年養子」に対する需要が高いのが特徴です。海外では「成年養子」の制度がある国は多くありません。

 

日本国内において、「成年養子」になりたいという海外からの留学生も少なからずいます。しかし、実際に養子になったとしてもその特典はささやかなものです。国籍に変更はありません。在留資格も従前と同様に必要とされます。これは、「養子」となって、「不法滞在」をしたり、「違法就労」をする隠れ蓑に利用されないためなのです。